想うままに

ただの思考のメモ

今は懐かしき夏の想い出

夏はつとめて

むわりとした空気とセミの声で目を覚ます。仲睦まじく朝ごはんの支度をする両親を横目に、市営マンションの広場へと急ぐ。ラジオ体操の時間だ。
体操もそこそこに、参加カードのスタンプと参加賞のお菓子を貰いに列に並ぶ。友人と少しセミ取りに興じて、お腹がぐぅ、と鳴ったところで朝食の存在を思い出して家まで走る。
夏休みの朝のルーティンである。

夏は昼つ方。
外はうだるような暑さ。家の窓を全開にすると、日陰になっている1階の部屋に少し、ひやりとした空気が入る。祖父母と素麺を啜りながら涼を取るのが夏の穏やかな日常。
昼下がりに海に出かけて泳ぐ。ボートで少し沖合いに出て、ボートからの飛び込み芸を披露。目を閉じて海に浮かぶと、海中の音が聞こえる。人間が暮らす陸地を忘れて、波間に漂う時間は、幼いながらも大切なひととき。

夏は夕暮れ。
どこかでひぐらしが鳴いている。海で遊び疲れた身体に鞭打って、夕食までに夏休みの宿題を進める。一度シャワーを浴びたはずなのに、髪の毛からふわりと潮の香がして、シュノーケル越しにみた海中を思い出す。日記、計算ドリル、漢字ドリル、読書感想文、工作、自由研究。何から手を付けようか。
外はまだ明るいけど、もう18時だ。

夏は夜。
夕食後にスーパーカップを持って、祖父とベランダに出る。ビールを煽る祖父に負けじと、スーパーカップを掻き込む。頭がキィンと呻いた。
弟と表に出て花火に興じる。線香花火はお互いの手を叩いて落とし合う。スポーツマンシップなどない。すっかり煙臭くなった身体でお風呂に飛び込む。
一日の終わりに、クーラーを効かせた部屋で両親と弟とX-Filesを観る。微睡みの中で誰かがタオルケットを掛けてくれた。

幼い頃の夏を思い出しながら、誰もいない部屋で1人味噌汁を啜る社会人。